実習と実際に働くことの違いは?

同じ撮影でも、責任のかかり具合は違うよね。患者さんに対して、撮影した画像に対しての責任がある。自分の担当した撮影や検査で診断して治療されているのだから・・・・責任重いですよ。

それと、実験や実習と違うのは、生身の人間相手で、しかも病んでたり、不安に思っている人を相手に検査を行っている事。

私は、患者さんに嫌な検査だなと思わして帰しちゃいけないって思うのね。

例えば乳房の超音波検査だと、検査で塗布するゼリーは冷たいままで、検査後もティッシュペーパーで拭かせるだけの施設もあるのね。でも温めたゼリーを塗布すれば「ヒヤッ」と嫌な気分にならないし、拭く時は暖かいタオルで、さらにアロマの香りがすれば多くの人が『エステに来たみたい!』と喜んでくれるのね。患者さんは、乳房をさらけ出す羞恥心に加え乳がんをすごく心配していて「検査嫌だな!」と思いながら不安な気持ちで来るわけじゃない?それを一時でも忘れて、なんかいい気分だったって思って帰宅されるのが理想で、安全で診断に有効な検査であることは当然なのだけれども、それに加え「ここで検査してよかった」と思ってもらう工夫をすることが大事だと思います。ペイシェントケアとかホスピタリティー等の言葉で表現されますが、診療放射線技師、医療人としてはそういうところがなければいけないと思います。

始めの方に話した病院実習の時に仲良くなった女の子のことだけれど、RI検査の時に、手をいつも握ってくるのね、来ると毎回同じことしか言わないんだけどすごく一生懸命話してくれて、それでその子に感情移入しちゃってね。診療放射線技師は看護師とは違うけども、やっぱり検査の時に手を握ってあげたり声かけてあげたりして、安心させてあげて検査をしなきゃいけないと思ったことが、今の私の始まりで、そういう経験がなくて感動しなかったら、もっといい加減な技師になっていたかもしれないし、本当にすごいいい経験させてもらったと思っています。

 

どうすれば出世できますか?

病院開設準備室で実際にこの病院の運用を考えていたのが私と辞めたしまった副技師長だったので、実質上は技師長の代わりに全部決めていたこともあり、院長や執行部の面々とも顔見知りだから話もすぐに通ったりしたのでまあ、そういうところで技師長になるには近い距離だったのかもしれない。

一般的には、与えられた仕事を断らず頑張ってクリアしていくことかな。出来れば仕上がりにプラスアルファがあればなおいいよね。見てないようで、普段の仕事っぷりは見られていると思いますよ。また、ポジティブで人をまとめられる能力があることも出世=リーダーとして大事なことだとおもいます。それとつくづく思うのは、自分をどこに置いて物事を考えるかということ。一つの仕事に対して「ただ辛い」という人「辛いのでどのように改善したら良いかを」考える人、「自分だけでなく周りの人の辛さも考えて改善について」考えられる人。そこの違いかもしれないな。

 

藤井さんの好きな仕事や業務を教えてください。

管理業務はあまり好きじゃないな(笑)。やっぱり患者さん相手の仕事が好きです。学生の頃、スーパーの試食販売いわゆるマネキン販売をやっていたので、コミュニケーションをとる仕事が自分には合っているかも知れない。

もう一つはリアルタイムで判断しながら行う検査が好きです。胃透視、注腸検査など消化管造影検査などは、透視下でバリウムの流れをみて「あっ、病変見つけた!」みたいな。リアルタイムで見つけて自分だけの技みたいなのを発揮できるのが好きかな。自分がちゃんと病変見つけないと責任ある検査にはならないから。超音波検査もそうだしマンモグラフィーもそう。大変だし責任があるんだけどやりがいがある。

 

モダリティなど担当分野を選んだ(希望した)理由を教えてください。

先ほど話したようにリアルタイムで自分の技を駆使して病変を見つけられるからです。

 

 

 

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