将来、診療放射線技師の役割や業務。それから、取り巻く環境はどうなっていくのでしょうか?

変わるもの、変わらない ものを教えてください。

診療放射線技師の「業務」はまあ変わらないとは思うんですけど、「役割」は看護師さんとかもそうだけど、やっぱり医師の負担をどんどん減らして読影の補助だとか、そういう分野が増えてくるんじゃないかな。しかもAI(人工知能)にやらせるとか。AIにはファジーな部分がないと思うのでAIが判別できるような良い画像を診療放射線技師がきちっと提供していかなくちゃいけないと思う。

今は読影の補助とか言っているけど、私の中では基本的には読影が出来ないと良い写真が撮れないと思うのでそこは一貫して、ちゃんと診断も勉強しながら撮影・検査をしていかなくちゃいけないと思う。それからあとは、診療放射線技師は医療職の中でも、一番社会的に弱く、放射線技師の声を代弁してくれる政治家が1人もいないんですよ。

以前、柔道整復師が放射線管理とか被ばくの勉強をするから、自分たちが治療するために『柔道整復師に放射線撮影をさせろ、レントゲン撮影をさせろ』という提案を国会に提出したの。それは一応却下されたんですけども、そんな自分達の主張を代弁してくれる国会議員がいると提案がどんどん国会に出せるのだけど放射線技師にはそうした政治家がいないので、1番弱いのね。

放射線業務って、他の医療者にとってすごく魅力的なところなので、リハビリや柔道整復師や看護師さんは、MRIと超音波はもう技師さんにやらせないで、自分たちが独占したいって、そうした事も画策されているんですよね。だから放射線技師も職業団体としてしっかりまとまって、国会議員も出してやっていかないと、どんどん業務範囲が収縮していってしまう。だからそのあたり、ちょっと頑張っていかないといけないなって思う。

あと、「『地域包括ケア2025年』で在宅ケアや在宅医療をどんどんやりましょう!」という風に厚生労働省は最近、言っています。在宅医療においては、できれば診療放射線技師が在宅でポータブル撮影をし、場合によっては超音波検査もやり、画像処理をして画像送信する。しかも、その場で読影補助も行い、緊急性があるものだったらすぐ医師に電話して、「病院に搬送してすぐにCTやりましょう」とか「MRIやりましょう」というところまで出来たらすごくいいなって思っています。

そうすると、診療放射線技師としての業務も拡大されるし、患者さんにもその方が絶対いいと思うのね。「これは検査技師」、「これは看護師」、「これは医師」と分けるより放射線技師が全部一括して、しかも医師にもコンサルティングできるとなったら患者さんにもメリットがあるしね。

アンケートでは、今のところ在宅ポータブル撮影自体が少なくて、その中でも3割は放射線技師がいないので医師が撮っているという事なのだけど、「本当に医師が撮っているのかしら?」という心配があるわけですよ。そういう事を野放しにしちゃうと、結局は医師が指示して看護師が撮っちゃうってなるの。そうさせないためにも、「放射線技師がいなきゃだめだ」ということを診療報酬や技師法に折り込んで、診療放射線技師の地位の向上や業務の拡大をして行きたいなと思っています。

そのためには、政治家も大切なんですが、政治家が選挙に出ても診療放射線技師の組織票がないんですよ。診療放射線技師が、ちゃんと一致団結して、ベクトルを合わせて、皆が自分個人だけじゃなく、診療放射線技師全体の社会的な地位の向上を目指していかなきゃなって思います。ぜひ皆さんちゃんと技師会に入ってください。

 

本日は、2時間を超える長時間にわたり、お話をお聞きすることができ、大変勉強になりました。

ありがとうございました。